本物のゼロエネルギー住宅は得なのか?
前回は「日本のZEHは偽物のゼロエネルギー住宅??」と言う話題でした。
簡単におさらいすると、日本の基準では暖冷房が24時間利用される前提ではなく、また家電などの電力はエネルギーとして計算に入れられていないのでした。
今回は、ゼロエネルギー住宅にした場合、どの程度の光熱費の得あるいは損があるのかと言ったお話です。
暖冷房を間欠運転した場合のゼロエネルギー住宅の場合
まずは、暖冷房を間欠運転した場合です。
この場合でも家電などのエネルギーもゼロエネルギーにすることにします。
家庭内で利用する年間のエネルギー消費量は?
エネルギー消費性能計算プログラム<住宅版>を用いて、大阪や東京などの6地域で100㎡程度の場合の年間の一般的な建物の年間の消費エネルギーを算出します。その結果が以下となります。
上記の画像の赤丸が付いたところを注目して貰いたいのですが、年間に74,392MJのエネルギーを使う事になっています。これは省エネも何もしていない一般的な住宅の場合です。
今回はオール電化住宅と仮定します。
ここで使われたエネルギーは全て電力として利用されたということになります。
上記の年間のエネルギーは一次エネルギーと言って、発電所側で必要な石油や石炭のエネルギーとなっています。これを家庭で利用するエネルギーの量に換算する必要があります。
換算には専用の数値が法律で定められています。今回はこちらの国交省の資料を元に
全電源平均係数 8.64 [MJ/kWh] と言う数値を用いて計算します。
すると、年間で家庭内では8610 [kWh] の電力が使用されることになります。
家庭内で利用する年間の電気代は?
つづいて、これを電気代に換算します。これは新電力ネットさんから最近の単価のデータを頂きます。
平均的な電力販売単価となっていて、消費税や再生可能エネルギー発電促進賦課金は含まない単価だそうです。
その結果がこちら。
一時は電気代がうなぎのぼりでしたが、昨年あたりから少し落ち着きを取り戻しているようです。
少し見辛いですが、大阪の平均的な単価は22 [円/kWh]程度です。
ここから、単純計算すると 年間約19万円程度が光熱費となります。
間欠運転の場合の生涯の電気代は??
本来であれば家族の増減があり、簡単に生涯コストと出すことは出来ません。
単純に住み始めてから、毎年同じ額の光熱費が掛かるとするなら、30年住むとして570万円の光熱費がかかります。2人暮らしと4人暮らしとでは、1.2倍程光熱費が異なるようです。
ですので、もし30年間2人暮らしとしても、475万円程は掛かると言えそうです。
途中の家族の増減を考えると、30年で 475万~570万円 程度の光熱費が掛かるのです。
これをゼロに出来るのであれば、お金を掛けて省エネも何もしていない住宅からゼロエネルギー住宅とすることはかなりのお得と言えそうです。
24時間連続暖冷房した場合のゼロエネルギー住宅の場合
今度は24時間の連続暖冷房した場合も計算してみます。
あくまで消費する電力から、どれだけの光熱費が掛かるかを算出しているだけですので、その点はご注意ください。ですので、最初から24時間連続暖冷房を希望する人であれば、この位の電気代は覚悟しておく必要があるといった数値となります。
G2住宅で24時間連続暖冷房した場合の家庭内で利用する年間のエネルギー消費量の増分は?
先ほどは一般的な住宅をゼロエネルギー住宅にした場合を考えました。
今度はG2住宅で24時間連続暖冷房した場合の家全体で必要な年間のエネルギー量を考えます。
住宅は大阪や東京などの6地域で100 [㎡] 程度の場合とします。
前回の計算と同じように、間欠運転から24時間連続運転に変えた場合のエネルギーの増分を算出すると、7533 [MJ]の増分があります。 冷房に関しては、エネルギー消費性能計算プログラム<住宅版>において「ダクト式セントラル空調機」を利用した場合に24時間連続冷房方式の冷房消費量が計算される。
この場合14427 [MJ]の冷房エネルギーが必要と算出されます。一般的なエアコンで間欠運転をした場合が、6109 [MJ]なので、その差は8318 [MJ]となります。
つまり、G2性能住宅で間欠運転の場合から、24時間連続冷暖房に変更した場合、15851 [MJ] 程の増分が見込まれます。
G2住宅で24時間連続暖冷房した場合の電気代の増分は?
以上から、電気代の増分を計算すると、年間1835 [kWh]の増分が見込まれ、大阪の場合だと年間約4万円程の光熱費の増加となります。
先ほどと同じように30年間に修正すると、100万円~120万円程の増分が見込まれるのです。
前回のブログから、間欠運転前提のZEHから24時間連続冷暖房してゼロエネルギー住宅にするためには、太陽光発電で約1kwの太陽光発電容量が必要なのでした。
つまり、追加で1kwの太陽光発電を100万円より安い値段で設置出来れば、十分に元が取れることになります。ただし、これから太陽光発電を利用する場合はなるべく発電した電気を売らずに自宅で消費する工夫が必要になります。
まとめ
結局のところ、24時間連続冷暖房をした上でゼロエネルギー住宅にすることは、理屈上では得します。
しかし、太陽光発電は日中にしか発電できず、余った電力は売らずに夜に消費する用にどこかに貯めておく必要があります。
特に24時間冷暖房の場合は比較的沢山のエネルギーを必要とするので、電気自動車などに一度電力を貯める工夫が必要があります。こちらについては以下を参考にして貰えたらと思います。