国交省発行の高断熱住宅設計ガイド②災害時対策
前回は、国交省が編集協力となっている「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド」内の「オーバーヒート対策」に関する内容の解説を致しました。
<参考>https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001884522.pdf
今回は、この中にある高断熱住宅が災害にも強いという内容について、解説と共に補足をしていきたいと思います。
過去に私が書いた内容と重なっている部分もありますが、新たな視点も含まれているので、是非とも確認してみて下さい。
<参考>災害時にも役に立つG2住宅
高断熱住宅で災害に備える ― エネルギーを自給自足できる住まいの考え方
日本では地震や台風、大雨など、さまざまな自然災害が発生します。そんなとき、電気やガス、水道などのライフラインが止まってしまったらどうなるでしょうか。避難所に行けない場合、自宅でしばらく暮らす「在宅避難」という選択肢が重要になります。
「高断熱住宅」が災害時にどれほど役立つのか、そしてどんな設備を組み合わせれば、災害に強くて省エネな住まいになるのかを紹介します。
災害時にも快適に住める
災害で停電になったり、ガスが使えなくなったりしても、高断熱住宅ならしばらくは快適な室温を保つことができます。夏でも冬でも、エアコンや暖房が使えなくなっても、室温の急激な変化を防げるのです。
ただし、夏は「日射遮蔽(にっしゃしゃへい)」をしなければ直ぐに暑くなってしまいます。つまり窓から入って来る直射日光を遮る工夫(例:すだれやひさし)も忘れずに行う必要があります。
逆に冬は「日射取得(にっしゃしゅとく)」、つまり窓から太陽の暖かさを取り入れて暖房の代わりとする工夫も大切です。
これは、実際にG2住宅にて冬に計測した結果です。ほぼ、2/9から2/10では、青い線が低い位置で一定になっています。これはエアコン暖房がほぼ一日止まっているという意味です。丸一日暖房無しで過ごせている日が確認出来ます。

組み合わせたい4つの設備
1. 太陽光発電システム
太陽発電は、普段は電気代の節約に、災害時には「非常用電源」として使えます。
ただし、「自立運転機能」があるタイプを選ばないと、停電時には動きません。また、自立運転では最大1,500Wまでしか電気が使えないという事が殆どなので、使う家電の組み合わせに注意が必要です。
2. 蓄電池(ちくでんち)
太陽光発電でつくった電気をためておける装置です。昼に発電した電気を夜に使うなど、電力のムダを減らせます。
停電時には「自立運転モード」に切り替えることで、非常用電源として使えます。自動で切り替わるか、手動かも、あらかじめ確認しておきましょう。
設置場所は屋外・屋内どちらでも可能ですが、重さ(50~150kg以上)や音、気温、湿気などに注意が必要です。
3. エネファーム(家庭用燃料電池)
ガスから電気とお湯をつくる装置です。こちらは前回のブログでは紹介していませんでした。
ガスが通っていれば、停電しても電気やお湯が確保できます。
ただし、停電時に動かすには「自立発電機能」がついた機種を選ぶ必要があります。停電前に稼働していないと使えないこともあるので、操作方法を事前に確認しておくことが重要です。
発電できる電力は最大700W程度なので、使える家電は限られます。
4. 高効率給湯機器(貯湯タイプ)

「エコキュート」などのように、お湯をためておける設備です。日中に太陽光発電の電力を使ってお湯をつくり、夜に使うといった省エネが可能になります。
災害時には貯湯タンクのお湯や水を生活用水として利用できます。設置時には地震などで倒れないようにしっかり固定する必要があります。
住む人が知っておくべきこと
いくら設備が整っていても、住む人がその特性や操作方法を知らなければ、非常時に十分に役立ちません。そこで大切になるのが、以下のような住み方のポイントです。
- 停電や断水でも数日間は家で生活できるよう、水を準備しておくこと。
- 窓を開けずに室温を保つなど、断熱の特性を活かした生活の工夫をすること。
- 非常用機能の使い方を、平常時に確認しておくこと。
- 電気の消費量や使える家電を把握し、使用計画を立てておくこと。
まとめ:災害に強く、普段も快適な住まい
高断熱住宅に太陽光発電、蓄電池、エネファーム、高効率給湯器などを組み合わせることで、電気やお湯を自給自足できる「災害に強い家」をつくることができます。これらの工夫は、災害時だけでなく普段の暮らしでも省エネ・快適さに貢献します。
大切なのは、設計だけでなく「どう住みこなすか」。非常時の備えと日常の快適性を両立させることが、これからの住まいに求められています。