建物の形状は暑さ・寒さ、耐震強度、費用に影響する!
建物の形状はとても重要!
家づくりをする場合、間取りについては割と真剣に考えると思います。
どこにトイレがあると便利か?子供部屋は何部屋室用?キッチンと脱衣室のアクセスは?
このように、間取りのこととなると夢中になってベストな選択をしようとすると思います。
当然、間取りを考える事は大切です。
しかし、意外と「建物の形状」について、真剣に考える機会は少ないことが殆どです。
外観上、どのような見た目になるのかをパースなどの絵を通して確認し、好みに合うかどうかの検討は行うと思いますが、この形がどのようなものが良いのかは、割と自身の経験と好みによって決まっていることが殆どなのです。
しかし、建物は実は形状がとても大事な要素なのです。
今回は建物が何故、大切な要素なのかを見ていきたいと思います。
建物の形状によって、暑さ・寒さが変わる?
まずは手始めに下の図を見て下さい。これは建物を真上から見た形状です。
どれも延べ床面積が100㎡となっています。
多くの場合、延べ床面積で見積もりが決まるため、これらは大して差がないと考えがちです。
しかし、この3つには大きな違いが存在します。
何か分かりますか?
正解は周りの長さです。一番左は全部で40m、真ん中が41m、そして右が44mです。
同じ面積でも周りの長さが異なるのです。周りの長さが異なると何が違うのか?
周りの長さが異なると、外壁の長さにも違いが出ます。
外壁の長さが違うと、建物が外部に見える「表面積」が変わります。例えば、これが平屋で全て高さが3mだったとします。
外壁の表面積は、左から120㎡、123㎡、132㎡です。何と一番左と右では12㎡も面積が異なるのです。
如何に大きな違いか分かりますね。
床の面積や天井の面積(屋根の面積は形状によって一概には言えない)はどれも同じなので、これらの建物が外部に見える面積は、外壁による違いによります。
では、この外部に見える面積によって、何が違うのか?
外部に見える面積は、そのまま建物が外の空気に触れる面積になります。
ですので、外部に見える面積が大きいほど、外の温度の影響を受けやすくなるのです。
つまり、外部に見える面積が大きいと、同じ面積の建物でも冬は寒くなりやすく、夏は暑くなりやすくなるのです。
建物の形状によって、耐震強度も変わる!
続いて、以下の図を見て下さい。先ほどと同じ形状の建物の図です。
こんどはこれらの耐震性についても考えてみたいと思います。
こんなことはあり得ませんが、この建物には窓が無いとします。
左の建物と真ん中の建物では、どちらが強いでしょうか?
地震はどのように揺れるか分からないのが普通です。
完全に左右方向に地震が揺れた場合、真ん中の建物の方が左右に壁が長いため、地震に強いです。
しかし、上下方向ならどうでしょうか?これは左の建物の方が地震に強いと言えます。
では、両者は五分五分なのでしょうか?
先ほども言いましたが、地震はどの方向に揺れるか分からないのが普通です。
地震の対策をする場合はウィークポイントを減らす方が良いのです。
もし、少しでも斜めに地震が発生すると、建物を捩る(よじる)方向に力が発生します。
こうなると、建物はバランスの良い方が強いことになります。
結果的に、様々なケースを想定すると、左側の建物の方が強いのです。
では、右側の建物はどうでしょうか?
今回の図は、先ほどと違って青く示された部分があります。
先に答えを言うと、この青い部分と、白い部分が接している線。この部分は脆くなりやすいのです。
(これは作り方によります。)
また、凹んだ部分の角。こちらも弱い部分になります。
また、先ほどの捩れについても、バランスが悪いため、望ましい形ではありません。
建物の形状で、費用も変わる!
同じ面積であれば、値段は一緒。多くの場合は見積もりの段階では一緒の場合が多いでしょう。
しかし、実際には費用が異なります。
先ほど、壁の面積が違うことを示しましたが、壁の面積が違えば、当然外壁に使用する壁の量も変わってきます。12㎡も違うのですから、当然でしょう。
構造に掛かる費用も変わります。
ベストな形状は何か?
以上の3つの点からいうと、ベストな形状はどんな形状なのでしょうか?
暑さや寒さ、耐震の観点からいくと、「正方形の建物」が最もベストな選択と言えるでしょう。
もちろん、土地の形状によって多少の長方形や凸凹が発生することは仕方がないです。(と言うか、普通は正方形で無い方が多いです。)
とはいえ、あまり奇抜な形状にすることはお薦めしません。
凸凹が多すぎたり、やけに細長くなったりすることは、建物の形状としては不適切と言えるのです。