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冬場の太陽の熱は暖房替わりに出来るのか?

太田(健康・高断熱住宅専門家) 太田(健康・高断熱住宅専門家)

Contents

    パッシブデザインによる設計では、冬場に太陽の熱を採り入れる事が一つの設計手法となっています。

    <参考> 「パッシブデザインによる設計とは」

    では、太陽の熱を家の中に取り入れた場合、暖房の代わりには出来るのでしょうか?
    実際に計測して分かった事実を基に検証していきましょう。

    2023年冬に計測された太陽の熱の力

    ここに、この冬に計測された太陽からの日射量を計測したグラフがあります。

    2023/1/12に日射量を計測したグラフ

    この日は一日晴れで、グラフのオレンジ色にあるように雲の影響が殆ど無い日でした。
    青いラインが外から窓の内側へ入ってきた日射の量になります。9時頃を見ると、大体日射量が280(W/㎡)程ある中で、屋内への日射が110(W/㎡)程となっています。これはガラスの性能の良さを表していることになるのですが、6割型の日射を防いでいることになります。夏場に暑くなりすぎないのは、この窓の日射を防ぐ性能が高いことに起因します。

    ここで、注目したいのが青いラインが大きい場合で110(W/㎡)程と言う点です。この計測した窓は東側に向いているのですが、十分に太陽の日射が当たると、この程度の熱が取れるという事です。もちろん、この値は窓ガラスの性能によって変わるので、一概には言えませんが、目安にはなります。

    G2性能の家に必要となる暖房の量

    次にG2性能の家に必要となる暖房の熱の量を簡易的に見てみます。
    非常に簡単にはUA値を利用して、概算的に求めることが出来ます。
    G2性能の住宅では、大阪や東京などの地域ではUA値0.46が目安ですから、ここから求めます。
    仮に下のような住宅を想定します。

    大阪の平均的な家の大きさは約100㎡なので、以下のような一般的な家を想定します。
    床面積が1階、2階共に49㎡で床と天井に断熱しています。1階の床から2階の天井までの高さを7mとすると、この家の断熱部分の表面積は、

    床49㎡ + 天井49㎡ + 外壁49㎡*4面 = 294㎡

    となります。また、家の中は暖房が効かせることで、22℃になると想定し、屋外は大阪の一般的な冬の温度である7℃を想定します。すると、22℃の温度を保つためには

    0.46*294*(22-7)=2028.6(w)

    の熱が必要となります。
    ※この他にも隙間から逃げる熱や換気によって失う熱なども考慮する必要がありますが、今回は無視します。また、床に断熱をするのでなくて基礎に断熱する場合は、基礎スラブから逃げて行く熱を考慮する必要があるため、これほど単純にはなりません。

    暖房の代わりとして必要な窓の面積

    暖房を行うために必要な熱の量は分かりました。次に太陽の熱を暖房の代わりにするためには、窓から入って来る日射が殆どになるため、ある程度の大きさの窓が必要になります。今後はこの窓の大きさを検討してみます。

    窓から取れる熱の量が最大で110(W/㎡)程でした。これは、窓ガラス1㎡で110Wの熱が入って来ると言う計算なので、もし窓から入って来る熱だけで暖房の代わりにしようとすると、

    2028.6 ÷ 110 = 18.5(㎡)

    の大きさの窓が必要なことになります。
    例えば、人が出入りできる掃き出し窓であれば、概ね2m×1.5m=3(㎡) となります。
    つまり、暖房の代わりに太陽の熱で暖めようとすれば、この窓が6か所程必要になるという事です。
    これはあくまで、東面だけで考えた場合です。
    これは果たして現実的でしょうか??

    実際には人間も発熱していますので、大人一人で大体100w程の熱を発しているとされています。ですので、6枚も必要は無いかもしれません。しかしこれに近い窓の大きさは必要になります。
    まして、曇りの日であればこれよりもさらに少ない熱量になるわけですから、G2性能の住宅において、太陽の熱だけを暖房の代わりにすることはあまり現実的ではないと言わざるを得ないでしょう。

    G3の住宅であれば太陽の熱が暖房の代わりになるか?

    更に断熱性能を上げた場合を考えています。今はG3と言う更に上のグレードが出来ています。
    この場合、G3であれば大阪や東京と言った場所ではUA値0.26となっています。
    つまり、

    0.26 ÷ 0.46 = 0.56

    程度の熱量があれば、上の絵と同じ状況が保てます。

    0.56 × 2028.6 = 1147(W)

    の熱が必要という事になります。
    この場合、先ほどの窓であれば、3.5枚程度の大きさがあれば暖房の代わりになると言う試算です。
    東側だけでこの程度の窓が必要になる事を思うと、これも現実的とは言い難いですね。

    まして、夏のことを考えるとこれら全ての窓に対して、夏の日射が入らないように配慮する必要があることを思えば、如何に現実離れしているかが分かるかと思います。

    無暖房住宅は必要か?

    もちろん、窓ガラスの工夫や壁や天井などの断熱性能を上げることで無暖房住宅にすることは可能です。暖房が必要で無くなる訳ですから、かなりの省エネに繋がる事でもあります。G3住宅の更に半分のUA値にすれば、実質無暖房住宅も可能と思われます。しかし、あくまで実質であり、曇りの日が続けば暖房が必要となる場合もあります。更に夏に関しては、日射による影響で暑くなりすぎないような工夫が必要となります。まだまだ一般的なものではないので、投資費用の面でそれほど簡単なものではありません。将来的なエネルギー価格の高騰を見込めば、費用対効果の面で得する可能性もあるとは思いますが、今の時点では慎重な判断が必要でしょう。

    理想的には無暖房無冷房の住宅が誕生すればそれが一番良いのでしょうが、今のところ理屈上でもこの無暖房無冷房住宅は実現しそうにありません。(まぁ、暑さを我慢すれば可能は可能ですが、快適とは程遠いものとなります)