暖房では実現できない、高断熱住宅ならではの快適性
暖かい家に住むことが、如何に居住者の健康を維持できるかという事についてはこちらのブログで何度か触れてきています。
【参考】「ヒートショックは交通事故よりも怖い!健康安全に暮らせる住宅とは?」
「調査に基づく暖かい家に住むメリット」
しかし、このような話をすると冬場に暖房をガンガンに効かせれば良いと考えることも出来ます。
実際、単に室温を暖めるだけであればそれでも構わないのですが、実はこれだけでは本当に快適な家にすることは出来ません。
今回は本当に快適な家を実現するためには、「断熱」することが特に重要であることを改めて説明します。
断熱住宅は体感温度が違う!
まずは下の絵を見て下さい。
下の絵は、左側が断熱性能が低い家で、右側が断熱性能が高い家です。
室温は同じ23℃なのに、断熱性能が低い家では住んでいる人が震えているのに対して、断熱性能が高い家では、特に元気にしています。この違いは何でしょうか?

外気温は両方とも同じ7℃となっていて、大阪の冬によくある状況です。
よく見てみると、左側の断熱性能が低い家では、外気の影響で壁面の温度が10℃程度まで低くなっています。
これに対して、右側の断熱性能が高い家では、断熱が効いているため外気に影響されずに壁面の温度が室温に近い22℃になっています。
この違いによって、両者の間には感じている温度(体感温度)が異なっているのです。
実は、人間が感じる体感温度は室温だけでは決まりません。
体感温度はおおよそ、
体感温度 = (室温 + 周辺の壁や天井、床の平均表面温度) / 2
になると言われています。
ですから、これを利用すると
左側の家の人が感じている体感温度は、仮に床も壁も天井も全て10℃だとすると(23+10)/2=16.5℃
右側の家の人が感じている体感温度は、仮に床も壁も天井も全て22℃だとすると(23+22)/2=22.5℃
になり、同じ室温にも関わらず体感温度が全く異なるのです。
つまり、いくら暖房をガンガン効かせて、室温を暖めても周囲の壁面や天井、床の温度が低いままだと寒いのです。
この周囲の壁や天井、床の温度を上げようとする場合、暖めた表面が直ぐに下がっていかないように家の外の温度の影響を受け難くする必要があります。このためには断熱することが必須となるのです。
断熱住宅は上下の温度差が無くなる!!
更に断熱性能の低い家と高い家の違いを別の角度から見ていきます。
断熱性能が低い家では、一般的に窓から多くの熱が逃げて行きます。
冬場に窓の前に立った際、冷気を感じたことがありませんか?
あれは、窓からそれだけ熱が逃げているからそのように感じるのです。

上の絵のように、せっかく暖房で暖まった空気も窓に近づくと冷やされてしまいます。
そして、冷やされた空気は暖かい空気よりも重いので、冷やされた空気は下降します。
これを一般的に「コールドドラフト」と言います。
コールドドラフトが生じ続けると、やがて冷たい空気が部屋の下の方に溜まってしまいます。
そうすると、下の絵のように部屋の上部には暖房によって暖められた空気が溜まり、部屋の下部にはコールドドラフトが溜まり、部屋に上下温度差が出来てしまうのです。

いくら暖房をしても、頭はボーっとするほど暖かいのに、足元は寒いといった経験がありませんか?
正にそれは断熱性能が低いことによって発生するのです。
『頭寒足熱』と言う言葉がありますが、これは足元を暖めて頭を冷やすと心地がよいことを言います。
断熱性能が低い家では、これとは正反対の部屋が出来てしまい、寧ろ不快となってしまうのです。
それに比べて断熱性能が高い家ではどうでしょう?
断熱性能が高い家では、窓も断熱性能が高いためコールドドラフトが殆ど生じません。
このため、上下に温度差が出来にくくなり、部屋の隅々まで暖かくすることが可能となるのです。
このため、頭寒足熱とまではいかなくても十分に快適な空間が出来上がるのです。
また、上下温度差は快適性だけではありません。
下の絵は、全国の様々な場所にある家のリビングで、上下温度差が大きい家と、小さい家に住む人の朝起きた際の血圧の違いを計測したものです。

この結果、上下温度差が大きい家では、上下温度差が殆ど無い家と比べて高血圧である確率が1.5倍ほど高かったのです。
つまり、上下温度差が少なければ高血圧になり難いという事が分かってきているのです。
このように断熱性能が高い家に住むという事は、暖房をガンガン効かせるだけでは達成することが出来ない快適性や健康安全性を維持することが可能なのです。