高断熱住宅に合うエアコンの選び方
暖房と採暖の違いを意識しよう
日本は西洋文化が入って来る以前は、基本的に「採暖」のみを行っていました。
採暖とは字の通り【暖を採る】ことで、人を暖めることが主目的です。
囲炉裏や焚火に代表されるように、日本は古来「採暖」が文化でした。
ここに西洋文化が入って来て、「暖房」と言う概念が生まれます。
暖房とは字の通り【房を暖める】ことで、部屋を暖める事が主目的です。
日本にこの文化が入って来た時、実は日本では混乱をきたしています。
暖房の方は、病院や図書館、ショッピングセンターなどではそのままの概念で取り入れられています。
これらの建物では、人が居ようがいまいがどちらでも空間を暖めています。
しかし、日本の住居においてはどうでしょうか?
未だに、エアコンを利用していても「人がいる時のみ」にエアコンを動かしているのではないでしょうか?
元来、エアコンは「暖房」用の機器であって、採暖用の機器ではありません。
つまり、人を暖める目的では無いのです。
欧米では、住居であろうとも人がいる居ないは関係なしに、暖房を行います。
これに反して、日本人は「採暖」の文化が根強く残っているために、人がいるときのみに稼働させるのです。
幸い、この考え方は今までは省エネに繋がっていたので、大きな問題にはなりませんでした。
しかし、住宅の高断熱化が進むとそういう訳にはいきません。
むしろ、エアコンをつけたり切ったりしている方がかえって光熱費が高くなってしまい、省エネで無くなってしまう可能性すらあるのです。
高断熱住宅の場合は、エアコンは採暖ではなく「暖房」のために利用するのだと認識する必要があります。
カタログの畳数を見てはダメ”!大きさ選びのポイント
暖房のためのエアコン選びをする場合、一般的にはエアコンのカタログを開いて、そこに書いてある畳数のめやすを基にして部屋の大きさにあったエアコンを選ぶことが一般的です。
しかし、高断熱住宅になるとこの選び方では基本的にオーバースペックとなり、無駄な電力を消費してしまいます。
何故かと言うと、この畳数のめやすは基本的に【無断熱住宅】を前提として算出されているからです。
ですので、高断熱住宅でエアコンを選ぼうとした場合は、この畳数のめやすを基準に選んでしまうと不必要に大きな容量のエアコンを選んでしまうことになってしまうのです。
では、どのように選べばいいのでしょうか?
そのために必要となるのが、UA値です。
つまりここで暖房の考え方が必要になるのです。
房を暖めるのに最適な性能のエアコンを選ぶためには、その建物において外部との熱のやり取りがどれだけあるのかを知る必要があります。これを端的に表しているのがUA値です。
ただし、これだけで計算できる訳ではありません。
熱の出入りはこれ以外にも換気による熱の出入りがあります。
この分を考慮してやる必要があります。
換気には自然な換気による熱の出入りと、換気扇(機械)による熱の出入りがあります。
これらを全て加味して、最適なエアコンの性能を選ぶと良いのです。
自然な換気とは、家の隙間から生じる換気のことです。家の隙間はC値によって表現されます。
つまりC値を利用して、計算を行います。
通常は、C値は建築現場にて実際に測定しなければ分かりません。
ですので、計画の段階では、過去の経験に基づいた実現可能なC値によって求めます。
換気扇(機械)による換気とは、24時間の利用が義務付けられている24時間換気扇によって発生する熱の出入りです。この換気扇による熱の出入りは割と多いので、必ず加味する必要があります。
もちろん、一般の住まい手がこの計算を出来る必要はありません。
また、この計算方法は概算による計算方法で、確実なものでもありません。
とは言え、知っておくべき事はエアコンメーカーのカタログに記載されている「畳数のめやす」を利用した選択方法では、光熱費が高くなってしまう事を知っておくことが肝心です。
そして、実際の計算についてはプロに任せる事が大切です。
余分な機能は無い方が良い??
エアコン選びにおいて、もう一つ必要な知識として、高断熱住宅用に選ぶエアコンはなるべくシンプルな方が良いという事です。
最近のエアコンでは、様々な企業が様々な機能を搭載したエアコンを発売しています。
しかし、これらの機能には高断熱住宅においては不要な機能となるものも多いのです。
例えば、最近のエアコンでは一部の部屋だけを暖める機能を備えたものがあります。
これは使用する場所に必要な時間だけ暖房をすると言う考えに基づいて設計されているのですが、24時間稼働が前提であれば、これは不要となります。
また、気流のコントロールについてもさほど重要ではありません。
遠くまで気流を飛ばす機能を備えていたり、人に気流が当たらないように工夫されていたり、様々な機能があります。しかし、高断熱住宅の場合、房を暖めることがメインなので、気流が直接当たるような場所にエアコンは設置しませんし、24時間稼働しているため、遠くまで気流が及ぶ必要もありません。
また、換気機能についても既にある住宅で換気計画がしっかりとなされていない住宅の場合はとても重宝するのですが、新しく建築する建物であれば換気計画は別途しっかり計算して立てているため、不要になります。
これらの機能を備え付けたエアコンはメーカーの上位機種に多いです。
つまり、上位機種のエアコンは高断熱住宅にとってはオーバースペックである可能性が高いのです。
無駄に高いエアコンを選定するよりは、必要な性能を最低限備えたエアコンを選ぶことで、エアコンを導入するために必要な費用を抑える事が可能なのです。
高断熱住宅でもあった方が良いエアコンの機能とは?
先ほどは無駄な機能を備えているエアコンは不要と言う話でしたが、今度は逆にあった方が良いエアコンの機能についてです。
まず、何と言ってもエアコンで絶対に備わっていて欲しい機能は「除湿」機能です。
もちろん、この除湿機能だけで夏の全ての潜熱負荷(と言う)を解消できる訳ではありませんが、その他の除湿を叶える機器が高額であることを思うと、除湿性能が必要になります。
この場合でも、いわゆる「再熱除湿」型の機能は温度コントロールはし易いのですが、かえって消費電力が非常に多くなってしまうので、一般的な冷房除湿とする方が良いです。
掃除機能はどのタイミングで動くのかに注意が必要です。
掃除機能はあると便利なのは間違いありませんが、エアコンの停止ボタンが押されたタイミングでしか掃除しないものもあります。こういったものは24時間稼働の場合、殆ど掃除しないことになりますので、注意が必要です。24時間の連続運転をしていても定期的なメンテナンスを行う機能のものが良いでしょう。