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高断熱住宅で、一番快適な温度や湿度は?暖房編

太田(健康・高断熱住宅専門家) 太田(健康・高断熱住宅専門家)

Contents

    寒い時期に差し掛かってきました。12月ですが、あまり寒く感じていないのは私だけではないと思います。とはいえ、12月末から1月にかけてはまた急に寒くなりそうです。

    そんな時期に差し掛かるとエアコンを運転するかどうか、あるいは何度設定で運転するべきかを迷います。最近は、環境省が省エネも加味したエアコン設定温度として22~23℃程度を推奨しています。しかし、この温度設定本当に快適なのでしょうか?

    そこで、今回は「高断熱住宅」に絞った場合の快適な温度や湿度の状況を考えてみたいと思います。

    はじめに:快適な室内環境とは?

    家の中の快適さの秘密

    まずは、家の中の快適さを決めるためには、人間がどのように快・不快を感じているのかを考える必要があります。もちろん、気持ちが良いかどうかといった心理的な快適性も考えると良いのですが、今回は実際に体に影響がある要素のみで考えてみたいと思います。一体どんなものが影響するのでしょうか?

    その① 室温

    一番最初に思いつくのが、快適性を大きく左右する室温です。これは直ぐにピンとくるかと思います。

    その② 湿度

    最近では、割と広く注目されている湿気です。関西のほうでは、湿気と書いて「しっき」と読むこともあります。未だに人間は湿気をどのように感じているのか、詳細が明らかになっていません。

    その③ 風速(気流)

    夏などは特に扇風機の風が当たるのとそうでないのでは大きな違いがあります。体の表面の水分の量と関係しています。

    その④ 放射温度(熱放射)

    あまり、意識されていませんが家の断熱性能で最も変わるのがこの放射温度です。簡単に言うと物の表面温度です。この表面の温度が放射となり我々の体感温度に影響しています。

    その⑤ 着衣量(着ている服の量)

    体に最も密着していて、影響が大きいとされています。ただ、体の内部の温度(深部体温)には、呼吸によって吸い込まれる温度の影響も大きいです。

    その⑥ 代謝量(活動量)

    メット(met)という単位で表すことがおおいのですが、体からの発熱の量です。座っている状態、立っている状態、歩いている状態ではそれぞれ発熱量が違い、これによって暑さ、寒さの感じ方が変わります。服でもたくさん走った後は、寒く感じないのがいい例です。

    おまけ 仕事量など

    例えば、重りなどを持っていると、人間は必要なだけの力をだします。この時、発熱量が上がります。先ほどの代謝量とは分けて、仕事量と言います。これら以外にも体がどれだけ物と接しているか、呼吸の具合は激しいか?普通か?汗をかいているかどうか?などによっても、変わります。


    PMVって何?快適さを数値で表す

    PMVの簡単な説明

    先に挙げた全ての要素を加味して、その人が快適に感じているかどうかを評価する指標がPMV(予測温冷感申告)というものです。数値で表すのですが、マイナスであれば寒く、プラスであれば暑い。-0.5~0.5の間の数値であれば、快適に感じていると評価する人が多くなるとされています。

    快適な室内環境を科学的に理解する

    このPMVという指標、全ての人間の感覚に寄与する要素を網羅しているので、割と有名なのですが残念ながら、ヨーロッパの人を実験して作られた指標です。ですので、日本人がそのまま当てはまるかどうかは未だに検証されていませんが、よく利用されています。

    今回はこれを使って、どんな温度や湿度が良いのかを見ていきましょう。


    理想の温度や湿度:高断熱住宅での適切な温湿度

    冬季の理想的な室温

    PMVはゼロに近づけば近づくほど、快適に感じる人が多くなるという指標です。
    では、実際にゼロに近くなる状況とはどんな状況なのでしょうか?

    快適性に関係する、①~⑥まだの要素の内、建物の性能に関係ない部分をまずは決めておきます。

    ⑤の着衣量(着ている服の量)ですが、これはCLO値(クロ値)と呼ばれる値で表します。
    高断熱住宅で住んでいる人は概ね薄着です。
    ですので、薄手の半そでに、薄くて長いズボンを穿いた状態を想定します。
    この場合のCLO値は約0.44です。

    ⑥の代謝量ですが、概ね家では座っているか、寝転んでいる時間が長いと想定されるので、座った状態の代謝量とされる、58.2(W/m2)とします。ですので、仕事量はゼロです。

    そして③風速ですが、シーリングファン等を設けた場合、気流を感じることがありますが、今回はシーリングファンを設けずに、1台のエアコンのみで過ごしていることを想定します。
    この場合は、風速は殆ど感じることがありませんので、0.02(m/s)としておきます。

    今回は室温を対象にしたいので、②湿度については取りあえず理想的な50%としておきます。

    さて、この状態で①室温と④放射温度さえ決めればPMVは算出されます。
    前回のブログで、トリプルガラスを用いた場合、ガラス表面の温度は室温とさほど変わらなくなります。これは、壁面においても同様になります。

    <参考>ペアガラスとトリプルガラスの違い

    ですので、今回はトリプルガラスを採用した住宅として、室温と放射温度は同じ温度になることにします。

    この時、PMVが最もゼロに近くなる温度は何度でしょうか?

    その温度は 26.23℃ です。この時にPMVはゼロになるのです。

    恐らく、夏や冬を通して26.23℃をずっとキープ出来れば、これ以上なく快適に過ごせることになるでしょう。ほぼ、一年中春の陽気が続くような感じですね。

    温度によって快適さが変わる

    最近では、冬場のエアコンの設定温度について環境省が「WARMBIZ」という活動で、「19℃を目途に過度にならないように適切に調整に努める」と謳っています。これは、省エネを意識した温度設定なのですが、実際に19℃だった場合、どのようなPMVになるのでしょうか?

    なんと、PMVは-2.93となり、殆どの人が寒さをうったえる状態となってしまうのです。

    最近では、22℃程度の設定が良いという説もあります。これは、省エネ性と快適性を両方考慮に入れた場合の設定温度と言えます。この場合のPMVはどうなるでしょう?

    この場合でもPMVは-1.72となり、やはり薄着の状態では寒さを感じることが多くなります。

    高断熱住宅に限らなくても、実際に多くの人が設定している温度設定はどうなっているでしょう?
    パナソニックが調べた結果がこちらです。

    多くの人が22℃~26℃の設定温度としているようです。


    エネルギー効率と快適性のバランス

    快適さと省エネの両立

    ここまで見てきたように、例えば冬の場合、多くの人が快適と感じる温度は26℃のようです。
    しかし、実際に低断熱な住宅でエアコンを26℃設定で運転し続けると、かなりの消費電力が掛かります。

    では、どうすれば良いのでしょうか?
    実は、以前こちらのブログでも紹介したのですが、

    <参考>G2高断熱住宅における冬の室内温度を調査結果

    G2程度の高断熱住宅であれば、エアコンの設定温度を22℃程度としていても、実際の室温は25℃~26℃程度となり、床面や壁の温度は26℃~28℃となることが分かっています。

    つまり、快適さと省エネを両立させるためには、トリプルガラスを利用したG2住宅が丁度良いのです。

    ここまでくると、今度は夏についても最適な温度が知りたくなると思います。
    しかし、今回は長くなってきましたので、次回と致します。