ZEH相当でなければ長期優良住宅ではなくなりました
こちらでは、2030年に全ての新築住宅のZEH化に向けて国が動いていることをお知らせしてきました。その動きに伴って、2022年10月から、以前からあった長期優良住宅の基準が変更されました。
長期優良住宅とは?
長期優良住宅とは、通常の建築基準法で規定されている最低限の性能を兼ね備えた住宅とは違い、優良と呼ぶに相応しい性能を兼ね備えた住宅として、公的に認定する制度で2009年から運用されてきた制度です。年間10万戸程度の戸建て住宅がこの認定を受けていて、新築住宅の約4戸に1戸が長期優良住宅となっています。
性能とは、耐震性能、省エネ性能、断熱性能、劣化対策、維持管理・更新の容易性
といった項目があり、これらそれぞれの基準を満たしていることが求められます。
そして長期優良住宅の場合、基準を満たした建物であれば補助金を貰える対象となり、早いもの順にはなるのですが、毎年100万~140万円程度の補助が国から支給されてきていました。また、住宅ローンの金利が安くなる制度や、税金が安くなる制度、保険が安くなる制度など、様々な優遇が受けられる住宅となっています。
このため、長期優良住宅制度が利用されることも多いのですが、この度、地球温暖化防止を目的とした省エネのためにこの基準が改定され、それまでの基準からさらに高い基準が設けられる事となりました。
省エネ性能の部分で改定された内容
実際にどのような改定が行われたのでしょうか?
以前から、省エネルギーに関しては「断熱性能」または「省エネルギー性能」のどちらかを満たしていれば良いことになっていました。しかし、新しい基準ではこの両方の性能を満たさなければならないことと大きく変更されています。
<断熱性能に関する改定>
断熱性能については、断熱性能等級と言うものがあります。
以前は等級4を満たすことが求められていました。これは、大阪や東京等の地域であれば、UA値を0.87とすれば満たされ、以前はこれが最高等級でした。
しかし、今回の改定では新たに断熱性能等級が5,6,7と定められ、この内の等級5を満たすことを求められるようになりました。
この等級5は、ZEH(ゼロ・エネルギー住宅)にする際に求められる断熱性能と同じ性能で、大阪や東京であれば、UA値を0.60以下にすると満たされることになります。
(ちなみに等級6がG2相当、等級7がG3相当となっています。)
【参考】あなたが目指すべきUA値とは?
<省エネルギー性能に関する改定>
省エネルギー性については、一次エネルギー消費量性能と言うものがあります。
以前は等級5を満たすことが求められていました。これはZEHに満たない基準でした。
しかし、今回の改定では新たに一次エネルギー消費量性能等級6が定められ、これを満たすことが求められるようになりました。
この等級6は、ZEH(ゼロ・エネルギー住宅)にする際に求められる一次エネルギー消費量と同じ性能です。
つまり、今後は長期優良住宅であってもZEHでなければ認められなくなったのです。
このように、確実にZEHを広げるための施策が進められていて、断熱性能等級に関してはそのうち等級1~4が無くなるのでは?とさえ言われています。
ZEHとは違う点
ここまでくると、長期優良住宅はZEHと同じなんじゃないかと思われると思います。
ほとんど同じであることは間違いないのですが、一つ大きな違いがあります。
それは何かと言うと、太陽光発電の設置が特に必須とはなっていない点です。
ZEHの場合は、太陽光発電の設置によって、利用するエネルギー分を賄う必要があります。
しかし、長期優良住宅ではそこまでは求められておらず自由選択となっています。
ここがZEHとは大きな違いになります。
また、逆にZEHでは求められていなくて、長期優良住宅に求められている点としては、省エネルギー性能の他に耐震性や劣化対策、維持管理・更新の容易性が求められている点です。
しかし、ここまでくればついでに太陽光発電も載せておきたいですね。
耐震性の部分で改定された内容
今回の基準の改定では、省エネルギー性能の部分のみが改定されたわけではありません。
もう一つの大きな改定ポイントとしては、耐震性能が挙げられます。
こちらの耐震性能については、以前は耐震等級と言うものが2又は3であれば長期優良住宅として認められていました。
しかし、今回の改定では『階数が2以下の木造建築物等で壁量計算による場合』は耐震等級3が求められることなりました。
『壁量計算による』というのは、2階建てや平屋の木造住宅の場合、『壁量計算』と言う簡易的な計算方法と、『許容応力度計(構造計算)』と言う詳細な計算方法の2種類によって、その建物の耐震性能を確認することが可能となっているのですが、この簡易計算を選ぶ場合は、より高い性能でなければならないと言う意味になります。
簡易計算の場合、建物の形状によっては同じ耐震等級であっても、実際の耐震性能ではそれほど大きな性能が期待できない場合があり、このため簡易計算では念のため等級3を確保しなければならないと言うことになったようです。
まとめ
冒頭であったように、2030年には全ての新築住宅をZEHにしたい目標があります。
その対策の一環として、まずは新築住宅の4分の1を占める長期優良住宅がZEH相当であることを求めるようになりました。
今後もこのようなZEH化に向けた施策がどんどん進められる予定となっています。
今、新しく家を建てるのであれば最低限ZEHにはしておきたいところです。