夏や秋・春における基準が出来ました
はじめに:猛暑でも快適な家って、どんな家?

ここ数年、地球温暖化によってかなり夏の気温が上がると共に暑い時期も長くなってきました。
高断熱住宅においても、外から入ってくる日射の影響を適切に遮断しないと、熱が過剰に家に入ることで冷房費がどんどん高くなってしまいます。
そこで、住宅の温熱環境を研究する学術団体「HEAT20」が新しく提案したのが、夏や秋・春における性能基準「G-A」「G-B」です。
HEAT20とは?
HEAT20は、住宅の未来を見据えて「本当に快適で健康的な家」の基準をつくる団体で、このキコログでも何回か紹介しています。
これまで主に「冬の暖かさ」を軸にG1〜G3という等級を提案してきましたが、今回初めて「夏や秋・春の快適さ」にも踏み込みました。
夏に向けた新しい基準「G-A」「G-B」とは?
HEAT20 の新基準
2025年7月に提案された、G-A及びG-B等級と言うのが以下の基準となっています。
等級 | 削減目標 | 特徴 |
---|---|---|
G-A | 約30%削減 | 現実的かつ高性能な基準。全国対応可能。 |
G-B | 約40%削減 | より高い性能を求める先進的な基準。 |
この「削減」という意味は、基準となる家(平成28年省エネ基準の断熱性能で、窓における日射遮蔽などがない家)で冷房を運転したり、消したりする普通の冷房と比べて、冷房に掛かるエネルギー(おおよその費用)を何%カットできるかという意味です。
冷房を“部分的に”ではなく“家全体で”使う考え方
G-A・G-B基準では比較対象の家とは異なり、「全館連続冷房」という発想が前提です。この全館連続冷房とは、家全体を24時間冷房し続けることを意味し、この結果、各部屋の温度差が少ない状況となり、一度冷えたら少ないエネルギーで維持できることを目的とした冷房です。
秋や春といった「中間期冷房」にも要注意!
春や秋は気温が心地よく、冷房が不要と思いきや…
高断熱の家では、太陽の直射日光が窓から入ることで室温が上がってしまうことがあります。
その結果、秋や春で、外気温22℃なのに、室内が28℃と言った状況になってしまうケースがあります。これは、G3等の高断熱になればなるほど、この傾向が表れます。
こうなってしまうと、本来季節が良い時期のはずなのに冷房を入れるしかなくなってしまいます。
でもそれって「もったいない冷房」ではないでしょうか?
上記の目標を達成すれば、この秋や春の中間期における冷房も減ると言う考え方です。
秋や春において、外の気温よりも家の中の室温が高くなるときに、基準となる家(平成28年省エネ基準の断熱性能で、窓における日射遮蔽などがない家)より冷房エネルギーが増えないことが目標となっています。
どうすれば達成できる?G-A・G-Bの設計ポイント
HEAT20で具体的な対策方法を明記しているわけではありませんが、基準を達成するために工夫すべき一般的な設計方法は以下となります。
ただし、現時点(2025/7/16)では、これらの手法をどのように評価するのかは明記されていません。

要素 | 内容 |
---|---|
断熱 | 壁・屋根・床の断熱材を適切に。 |
日射遮蔽 | 外付けブラインド、深い軒、すだれなどで直射日光をカット。 |
通風設計 | 窓の配置・大きさ・上下の抜け道を考慮して自然風を活用。 |
外気冷房 | 夜間や涼しい時間帯に外の冷気を取り入れて室温を下げる。 |
冬の性能と合わせた表記方法
これまでの主に冬に性能を発揮する断熱性能(G1, G2, G3)と今回のG-A, G-Bの基準を合わせた表記方法としては、例として以下が挙げられてます。
表記 | 内容 |
---|---|
G2-B | 冬(G2)+ 夏(G-B)基準達成 |
G3-A | 冬(G3)+ 夏(G-A)基準達成 |
この表示であれば、冬だけでなく夏や秋・春の1年を通して快適な性能であるかどうかを示していることになります。
冷房における基準住宅との違い
今回掲げられたG-A, G-B基準を基準住宅と比較した場合の例を以下に示します。
あくまで基準住宅の冷房費を仮に8000円とした場合の大体の目安です。
温度ムラ無く、快適に過ごせる上に、冷房にかかる費用も低くなることが大きなメリットです。
条件 | 基準住宅 | G-A住宅 | G-B住宅 |
---|---|---|---|
冷房費(基準を8000円とした場合) | 基準8,000円 | 約5,600円 | 約4,800円 |
冷房方法 | 冷房が運転されていない時間がある | 24時間冷房 | 24時間冷房 |
温度ムラ | 多い | 少ない | 少ない |
おわりに:夏や秋・春は断熱だけでは不十分
高断熱住宅は、冬において大きなメリットがあります。
しかし、高断熱住宅は遮熱という、太陽からの直射日光を防ぐ設計を取り入れなければ、夏や秋・春に冷房費が掛かってしまうおそれがあります。しかし、これまではこの点に対して、明確な基準がありませんでした。
HEAT20のG-A・G-Bは、まさにそのための新しい「ものさし」になります。
これから家を建てる方、リフォームを考えている方は、ぜひこの基準を知り、夏の快適さも“設計”できることを知ってもらいたいと思います。