風通しを最大限に利用する間取りや窓の工夫
通風の利用とは、風通しをよくするための間取りの工夫を言います。そして、採風とは窓の形状や配置の工夫によって風を採り入れることを指します。
いくら高断熱住宅とは言っても、中間期である春や秋の季節には窓を開けて、風を通して過ごしたいものです。
しかし、この通風を利用するためには事前に間取りの段階においていくつかの工夫をしておくことが必要となります。
今回は、この通風利用についてのお話です。
高断熱住宅は窓をあけても良いのか?
最近、たまに「高断熱住宅は窓を開けてはいけないのではないか?」と言った話を聞くことがあります。
よく聞くと、「高断熱住宅では換気をしているから窓をあけると換気が出来なくなるから、窓を開けてはいけない」のだと言う事をどこからか聞くようです。これは、全くの誤解です。
換気のための窓開け
確かに窓をどこか1か所だけ開けて、ずっとそのままにしておくことは良くありません。
しかし、この窓をどこか1か所だけ開ける意味合いとしては、【換気】の目的が殆どだと思います。
これは、通風とは違って『家の中の空気の入れ替え』を目的としています。
この換気目的の窓開けは、現在では家の中の換気を機械が担っているので、あまり頻繁に行う必要はありません。
とはいえ、もし湿気や臭いなどが気になる場合は、積極的に窓を開けても差し支えありません。
ただし、開けっ放しにしておくと今度は他の部屋の換気が上手くいかなくなるので、ある程度気になら無くなれば、キチンと窓を閉める必要があります。
通風のための窓開け
通風のための窓開けはこれとは少し考え方が異なります。
通風とは概念的には下記の絵のようなイメージです。
つまり、風が窓から窓へと通り抜けていることが分かります。
これが通風となります。
この通風には基本的に2か所の窓を開ける必要があり、外の気持ちの良い風を採り入れることを目的としています。
このための窓開けを行う事は、特に躊躇されるべきものではなく、積極的に行って構いません。
ただ、夜間に通風を利用する場合は各寝室の風の通り抜けを考えてやることが大切です。
通風を利用すべき最適な時期は?
まずは通風を利用したいといっても、窓を開けるべき時期はいつ頃でしょうか。
ひと昔前であれば、夏でも夜間に窓をあけると涼しい季節がありました。
最近ではどうでしょうか?
ここに、2020年の大阪における不快指数を計算したグラフがあります。
この不快指数は、温度と湿度から計算される値で、60~70の範囲内であれば、暑く寒くもなく快適な範囲であると言われています。
このグラフを見ると、7月や8月は夜間であっても快適と呼べる値を示すことはありません。
しかし、5月や10月頃ではどうでしょうか>
5月は昼・夜問わずに殆どの期間で快適な範囲に入っています。
また、9月でも中旬以降であれば、夜間でも快適な範囲の期間があります。
10月も中旬から下旬に差し掛かる辺りまでが、昼夜問わずに快適な範囲となっています。
なので、この期間であれば快適に通風利用が可能となるのです。
通風のためにすべき間取りの工夫
寝室における工夫
まず、通風の採用において最も利用したい場所が寝室になると思います。
特に寝ている間に通風が確保できると、体に風を感じながら眠ることが出来ます。
(ただし、あまり強い風は睡眠の妨げになりますし、まして10月頃は急に夜の内に寒くなる場合があるため注意が必要です。)
寝室で通風を利用するための工夫としては、2方向窓にしてやることです。
2方向窓とはなんでしょう?
2方向窓とは、上の絵のように一つの寝室に対して、2方向に窓を取ることです。
風は、入る場所と出る場所があって初めて入ってきます。
単純なことなのですが、意外と1か所しか窓が無いと言ったケースが殆どですので、出来るだけ2か所設けるようにしましょう。
とはいえ、中部屋等で2方向に窓が設けられない場合があります。
この場合はどうすると良いでしょうか?
この場合は、同じ工法にしか窓が設けられません。
そこで、通称「ウィンドウキャッチャー」と呼ばれる「たてすべり窓(ドアのように開く窓)」を2か所設置して通風利用する方法があります。
上の絵のように、たてすべり窓であればドアのように開くため、少し角度をつけて開ける事が可能です。
すると、例えば横からの風を矢印のように取り込むことが可能なのです。
そして、もう一か所設けた窓から入ってきた風を抜くようにする。
こうして、通風利用が可能となるのです。
書斎や家事室などの小部屋における工夫
書斎や家事室などの小部屋では、なかなか2か所窓を設ける事が難しい場合が多いです。
この場合は通風は諦めるべきでしょうか?
この場合は、上の絵のように部屋間において通風することを考えましょう。
風は入る場所と出る場所がしっかり空いていれば、少し曲がりくねっていても十分に風が通ります。
ですので、もし小部屋での通風利用を考える場合は、部屋のドアを通して別の部屋からの通風を確保することを考える事も一つの選択肢です。
ただしこの場合は、例えば書斎であれば部屋のドアを開けっぱなしすることになるので、音漏れの問題などが発生することも考えられます。
ですので、音漏れが気になる場合は通風と言う選択肢が良いかどうか、考えてやる必要があります。
採風のための窓の選択
ウィンドウキャッチャーの利用
先ほども紹介しましたが、縦すべりと呼ばれるドアのように開く窓であれば、横からの風を取り込むことが可能です。
隣の家との間隔が狭く、真正面からの風が殆ど望めない場合はこの横から吹く風を採り入れることを考えましょう。
地窓・高窓(ハイサイドライト)の利用
もし、快適な季節で、家を建てる場所の風向きを知っている場合は、地窓や高窓の利用も可能です。
例えば夜間に風を利用したい場合(通常、日中と夜間では風の吹く向きが変わるので、注意が必要です。)、風が入って来る方に地窓を設けます。家の中の方が暖かいとすると、その風は浮き上がりやすくなります。そして、風が出ていく場所にハイサイドライト(高窓)を設けると、低い場所から入って、高い場所へと抜けると言った風の通り道を作ることが可能です。
このように通風利用といっても、色々な風の利用方法があります。
パッシブ設計の最も難しい部分になるので、地域の特性にそった利用方法を検討することが大切になります。