家づくりに関する国のエネルギー政策を知っておく
家を建てるタイミングで「国のエネルギー政策なんて関係あるの?」と思うかもしれませんが、実はかなり密接に関わっています。これからの家づくりは、「国がどんなエネルギー政策を取ろうとしているか」を知っているかどうかで、住み心地もランニングコストも、防災力も大きく変わります。
ここでは、2025年の2月に発表された第7次エネルギー基本計画の中身について、解説していきます。
<参考>エネルギー基本計画
計画の中でも「再生可能エネルギー」と「住宅政策」に絞って、これから注文住宅を建てる人が押さえておきたいポイントを説明します。
最近になって新たな省エネルギー等級やGX ZEHなどが設置された理由についても、このエネルギー政策が基本となっています。
<参考>新たな省エネ制度が開始されます
国の方針の概要
第7次エネルギー基本計画では、大きく次の2つを目指しています。
- 再生可能エネルギー(太陽光・風力など)を“主役の電源”にする
2012年頃、電気の中で再生可能エネルギーが占める割合は約10%でしたが、2022年度には約22%まで増えました。今後も「主力電源」として、地域との共生や電気料金への影響に配慮しながら、最大限導入していくと明言されています。 - 住宅・建築物の省エネ性能を一気に底上げする
- 2050年には、日本中の住宅・建築物の平均をZEH・ZEB水準の省エネ性能にすること
- そのために、2030年度以降に新築される住宅・建築物はZEH・ZEB水準を目指すこと
が国の目標として書かれています。
つまり、「これから建てる家は、高断熱・高省エネ+太陽光発電などの再エネを組み合わせるのが標準になっていく」というのが国の方向性です。
家づくりの出発点は「断熱」と「省エネ性能」
なぜ断熱がそんなに重要なのか

計画では、住宅・建築物は一度建てると長く残るので、できるだけ早く高い省エネ性能にしておくことが重要とされています。
光熱費の観点でも、
- 同じ温度設定でも「断熱が良い家」はエアコン・暖房の稼働時間が短くて済む
- エネルギー価格が将来どうなるかわからなくても、「使う量が少ない家」は家計が安定しやすい
というメリットがあります。
これから建てるなら「ZEH水準」がひとつの目安
国は、「2030年度以降の新築はZEH・ZEB水準を目指す」としており、それに合わせて住宅の省エネ基準も2030年度までに段階的に引き上げる方針です。これが基に新しい省エネルギー等級やGX ZEHなどが設置されたのです。
今、注文住宅を建てるなら、
- 少なくともZEH水準(またはそれ以上)を標準ラインと考える
- 断熱性能(UA値)、気密性能(C値)に注目する
こうした目線を持っておくと、20年後・30年後も「古くさい家」になりにくくなります。
太陽光発電と蓄電池をどう考えるか
再エネは「主役」になる時代
計画の中で、再エネは
- コストが下がり、世界的にも導入量が急増していること
- 今後も主力電源として最大限導入していくこと
- その際、地域の景観・防災・廃棄パネル問題にきちんと向き合うこと
が示されています。
大規模メガソーラーだけでなく、屋根の太陽光発電を含む「分散型」の再エネが重視されており、家づくりとの相性は非常に高いといえます。
屋根の設計段階から太陽光を前提にする
これから家を建てるなら、
- 屋根の形・向き・勾配を「太陽光を載せる前提」で設計してもらう
- 隣家や自分の家の屋根・バルコニーで 影になりやすい位置を避ける
- 将来、蓄電池やEV(電気自動車)との連携を考えるなら、配線ルートや分電盤の位置も事前に相談
といった点を、設計初期から計画しておくことが重要です。
売電単価は以前より下がりましたが、
- 日中は自宅で利用することで電気代を抑えられる
- 停電時に非常用電源として使える
など、「家計+防災」の観点でメリットが大きくなっています。
給湯・設備は「電気×高効率」がキーワード
計画では、家庭のエネルギー消費のうち約3割が給湯器によるものとされています。つまり、どんな給湯器を選ぶかで、エネルギーの使い方がかなり変わります。
給湯器のおすすめの方向性
国の方針では、次のような高効率給湯器の導入支援を進めると書かれています。
- ヒートポンプ給湯機(いわゆるエコキュート)
- ハイブリッド給湯機
- 家庭用燃料電池(エネファーム等)
- 集合住宅向けの潜熱回収型給湯器 など
個人の家づくりの観点では、
- オール電化寄りにしたいなら、ヒートポンプ給湯機(エコキュート)
- ガスも使いながら効率を上げたいなら、ハイブリッド給湯機・燃料電池・潜熱回収型給湯器
といった選択肢を、ライフスタイルやガス・電気料金の契約と合わせて検討すると良いでしょう。
「将来の機器交換」を見据えたスペース計画
給湯器まわりで、家づくりの時に意外と見落としがちなのが、
- 屋外機やタンクを置くスペース
- メンテナンスの作業スペース
- 配管ルート(できるだけ短く、凍結しにくい経路)
などです。
将来、さらに高効率な機器に入れ替えることも想定して、「少し余裕のあるスペース設計」にしておくと、選択肢が広がります。特に給湯器は大型のものが多いので、狭い敷地などの場合は、入れ替えが困難になる場合がありますので、注意が必要です。
ZEHの定義についての変更

計画では、ZEHについて
- エネルギー収支を「正味ゼロ」にするだけでなく
- 省エネ性能をさらに引き上げること
- 自家消費型太陽光発電を促進する方向で、定義を見直すこと
が書かれています。
<参考>新たな省エネ制度が開始されます
つまり、「とりあえず太陽光をたくさん載せてゼロエネルギーに見せる」のではなく、
- 断熱・気密・設備でしっかりエネルギーを減らす
- その上で太陽光を載せて、自分の家でできるだけ使う(自家消費)
という順番がより重視されていきます。
家づくりの場面では、
- 「家の一次エネルギー消費量は、どのくらいか」
- 「太陽光の発電量のうち、どれくらい自家消費できそうか」
が、簡単に計算できるようになっているので、数字で説明してもらうと納得感が増すでしょう。
まとめ:これから家を建てる人のチェックリスト
最後に、第7次エネルギー基本計画の方向性をふまえた、家づくりの簡単チェックリストです。
- 断熱・省エネ性能
- ZEH水準以上か? 仕様書にUA値が明記されているか
- 将来の基準引き上げ(2030年まで)を見据えた性能か
- 太陽光発電・蓄電池
- 屋根形状・方位・勾配は太陽光を前提に設計されているか
- 将来の蓄電池・EVとの連携を見すえた配線計画になっているか
- 給湯・設備
- ヒートポンプ給湯機など、家庭のエネルギー消費の大きい「給湯」は高効率化なものか
- 将来の機器交換を見据えたスペースと配管計画か
- 防災・レジリエンス
- 停電時に太陽光+蓄電池で最低限の電力が確保できるか
- 部屋の暑さ・寒さ対策が考慮されているか
国のエネルギー政策は、大きな枠組みの話に見えますが、
「どんな家を建てるか」「どんな設備を選ぶか」という一人ひとりの選択の積み重ねでもあります。
これからの30年・40年を快適に、安心して暮らすための“インフラ”として、ぜひ第7次エネルギー基本計画の方向性を頭の片隅に置きながら、家づくりを考えてみてください。



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太田(健康・高断熱住宅専門家)