高断熱住宅における乾燥対策は、風邪予防にもなる?
高断熱住宅での生活では、いくつかの注意点があります。
【参考】高断熱住宅で変わる生活スタイル:これまでの家とは何が違うの?
参考のブログでも触れていますが、結構大きな注意点としては冬における乾燥です。
特に新築から2年ほどまでは、あまり乾燥感を感じない場合でも3年目以降に乾燥感を感じ始めることがあります。これは、基礎に大量の水が含まれているためで、その乾燥には2年ほどの期間が必要と言われていているためです。
今回は冬場の乾燥対策についてです。
高断熱住宅における乾燥の原因
「高断熱住宅は、よく乾燥する」と、言われます。
これは本当でしょうか?
正確には正しくない表現です。
高断熱住宅だから乾燥するのはなく、正確には「冬は乾燥するからその影響を受けている」だけです。
冬に乾燥するのは、ひとえに「温度が低い」からです。
温度が低いと、その空気中に含むことが出来る湿気の量は少なくなります。
なので、冬は乾燥します。
それでなくてもあまり多くの湿気が含まれていない外の空気を、換気によって採り入れます。
温度が低いままでは寒いので、暖房でこれを無理矢理温めます。
すると、それでなくても少ない湿気の量に対して、温度が高くなることによって空気はより沢山の湿気を含むことが可能になります。
温度の高い空気は、含まれている湿気の量が極端に少ないので、周りから湿気を奪おうとします。
高断熱住宅の場合、暖房はエアコンが主なため、大した量の湿気が含まれていません。
ですので、代わりに人体から湿気を奪おうとするわけです。
これが、乾燥の原因です。
もしガスストーブなどを利用していれば、ガスを燃やすことで大量の水蒸気が発生するので、それほど乾燥感を味わう事はありません。
つまり、「高断熱住宅だから乾燥する」のではなく、
「冬の割に暖かい温度なのに、家の中であまり湿気が発生していない」
から乾燥するのです。
ですので、暖かい割に湿気があまり発生していない家は、高断熱住宅でなくても乾燥します。
乾燥感は感じ方が人それぞれ
ただ、同じ高断熱住宅においても乾燥がものすごく気になると言う人と、あまり気にならない人がいます。これは何故でしょうか?
実は、温度に比べて湿度の感じ方はかなり人によって違う事が分かっています。
何故かと言うと、人間には暑さや寒さを感じる「温覚」と「冷覚」と言うセンサーが皮膚に備わっていているからで、暑さ・寒さの感じ方は多少の個人差はあれど、それほど大きく違いません(あくまで、同じ気候条件で長く住んでいる場合。)例えば、40℃のお湯を冷たいと言う人はいないでしょうし、10℃位の気温で裸で平気な人もいないでしょう。
これに対して、人間には湿度に対する専用のセンサーが存在しません。
(ゴキブリなど、乾燥に弱い虫には湿度を感じるセンサーが存在します。)
ですので、未だに人間が湿度をどうやって感じているのか、そのメカニズムは完全には分かっていません。このため割と曖昧に湿度を感じていると言われています。
70%の湿度と40%の湿度の違いを的確に言い当てることが出来る人は恐らくいないでしょう。
ですので、乾燥についてもかなり人によって感じ方や、症状の表れ方が違います。
喉が主に乾燥する。目が乾燥する。皮膚も乾燥する。
このように、人によって感じる感覚に結構違いがあるのです。
乾燥が健康に及ぼす影響
また、人間が直接感じる乾燥感の他に、乾燥にはもう1つ懸念すべき点があります。
それは多くの場合、ウィルスが乾燥に強く、増殖しやすい点です。
(コロナウィルスについては必ずしも該当しません。)
例えば、厚生労働省では建築物衛生法において、湿度を40~70%に定めていることに対して、インフルエンザ感染リスクを考慮して最低限度を40%にしたと記しています。
例えば、「インフルエンザの死滅速度は15~40%では、0.0073であるのに対して、50~90%では0.09と顕著に高い」ことを紹介しています。
特に冬季に発生することが多い、インフルエンザについては乾燥が大敵であると言えます。
乾燥は睡眠にも悪影響
また、最近では乾燥した状況では睡眠に影響するという事も分かってきています。太田が発表した論文では、乾燥することで明らかに寝返りが増える事を指摘しています。
この他にも、寒くて乾燥した寝室で寝ていると睡眠の質が下がると言う報告もあります。
高断熱住宅の場合、室温は暖かいので、必ず睡眠の質が下がるかどうかはわかりませんが、乾燥が睡眠に悪影響を与える可能性は高いと言えます。
乾燥対策は加湿器!?
例えば、厚生労働省ではインフルエンザ対策として、乾燥している場合には粘膜の機能低下があることを示すと共に加湿を推奨しています。そして、最適な湿度は50~60%であることを明記しています。
では、この乾燥対策はどのようにすべきでしょうか?
対策①全熱交換型換気扇の利用
まず、対策の最初として利用すべきは全熱交換型の換気扇の利用です。
全熱交換型の換気扇とは、冬場ならその乾燥した空気と家の中の加湿された空気の湿度も交換できる換気扇のことで、換気で家の中の加湿した空気をそのまま捨てるのではなく、外から取り入れる空気に捨てる空気の湿度を混ぜるタイプの換気扇です。
これは、湿度を一定に保つために常に役に立つので、是非取り入れたいところです。
対策②加湿器の利用
そして、その次に利用すべきが加湿器です。しかし、加湿器といっても様々なタイプの加湿器が存在します。
<参考>おすすめの加湿器の選び方
ここでは、最も電気代が少なくて済む「気化式」を紹介します。
上のグラフは、G2程度の性能の住宅で、冬場に温度を湿度を計測した例です。
1月24日辺りから加湿器を利用し始めています。
それまでは、30~35%程度で22~23℃程度の乾燥した状態でしたが、加湿器を使い始めると40~55%程度となり、21.5℃~22.5℃程度となっています。
室温が殆ど変わっていないとすると、どの程度の加湿を行ったことになるでしょうか?
単純に22℃30%の状態から加湿して、22℃50%の状態にするとすると(本当はこんなに単純ではありませんが。。。)、平均的な30坪程度の大きさの住宅で、毎時間150㎥程度の空気の入れ替えが行われます。
もし、全熱交換型の換気扇で無いとすると、常に1時間に約500g程の加湿が必要という事になります。
ですので、例えばPanasonicの気化式の加湿器【FE-KFS05-W】であれば、1時間に500g程度の加湿が可能です。4リットル程度の容量のタンクがありますので、約8時間毎に給水が必要となります。
寝る前にはかならず満タンにしておく計算です。
そして、この製品であれば、電力が6W程度なので、24時間動かしても約4円程度で済みます。
これを全熱交換型の換気扇にすると、更に少ない量ですみます。換気扇の交換効率によりますが、効率が80%程度であれば、1時間に100g程度の加湿で十分となります。
ですので、更に小さい容量の加湿器で良いことになります。(とはいえ、小さい容量の加湿器は気化式がなかったりして、電気代が逆に高くつく場合があります。この場合は超音波式を選ぶことになるでしょう。水の補充回数は少なくてすみます。大体1日1回程度)
ですので、全熱交換型の換気扇を用いる場合は、寝る前にコップ2~3杯程度の水で濡らした洗濯物を干しておくのが丁度良いかもしれません。
まとめ
加湿は行わないと、どんどん乾燥していき、健康にも快適性にも良くないです。
ただ、加湿器は大型に作られた加湿器が多いので、一般的な加湿器だと加湿しすぎてしまう恐れがあります。
実は、全熱交換型の換気扇を用いた高断熱住宅なら、濡れたまんまの選択ものを干しておく程度が電気代もかからず、丁度良いと言えそうです。