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高断熱住宅の長期的な健康影響

太田(健康・高断熱住宅専門家) 太田(健康・高断熱住宅専門家)

Contents

    冬の寒い時期には暖かい家に住むことで、血圧が改善し、身体にとって様々な好影響があることが分かってきています。しかし、これは元々寒い家に住んでいた人が、暖かい環境に変わって直ぐの状況に限った影響です。

    寒いままで居住し続けた場合と、暖かい家に住み替えた場合の違いについて、長期間計測した結果、どのような違いが出るのかが徐々に分かってき始めました。今回はその結果をご紹介します。

    ※今回のブログは、住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 第9回報告会~国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業調査に基づく、住宅断熱の医療経済評価〜で発表された内容を基に作成しています。

    1℃の違いで約0.5mmHgも違う

    5年間を通して実験が行われた結果、リビングの温度が1℃違うと5年間で血圧上昇量が約0.5mmHg異なってくることが分かりました。このmmHgは血圧の単位で、よく病院などで計測する血圧の最高血圧に相当します。

    例えば、リビングの温度が12.4℃だった寒い家に対して、リビングの温度が20.2℃の暖かい家で比較すると、5年経てば血圧上昇量が平均して3.5mmHgもの違いになったと報告されています。

    今後、10年、15年と経てばこれがどのように変化していくのか、結果が待たれるところです。

    40歳でG2住宅を建てた場合と断熱最低基準で建てた場合の違い

    健康な夫婦が共に40歳でG2の断熱性能の新築の家に住んで生涯を過ごす場合と、最低断熱基準(断熱等級4)の家に住んで生涯を過ごす場合とを比較します。

    生涯で、 断熱化工事費、暖房費、高血圧医療費、心房細動、冠動脈疾患、心不全、脳卒中によってかかる費用を比較します。

    両者では、生涯にかかる費用はG2住宅に住む居住者の方が62万円ほどアップしますが、これによって健康に生活できる期間が延伸することが明らかとなりました。

    <参考>Effect of living in well-insulated warm houses on hypertension and cardiovascular diseases based on a nationwide epidemiological survey in Japan: a modelling and cost-effectiveness analysis

    メンタルヘルスにもよい

    更に他の角度からの分析では、リビングにいて寒いと感じる頻度が高いほどメンタルヘルスが悪化することも明らかとなりました。寒いと感じる頻度が高ければ高いほど、精神的な健康度が下がってしまうという事も明らかとなりました。

    また、温度が高くなるほどこの精神的な健康度が良くなる確率が高くなり、暖かく過ごせることは精神衛生上も良いのです。

    働けなくなる可能性も低くなる

    同じようにリビングにいて、寒いと感じる頻度が高い人ほど、労働機能障害となる可能性が高いことも分かってきています。労働機能障害とは、病気や障害、精神的・身体的な問題によって、通常の労働や職務遂行が困難になる状態を指します。

    つまり、暖かいリビングで過ごせば元気に働き続けられる可能性が高くなるという事です。

    寝やすさも改善する

    寝る前に15℃未満の寝室で生活する人は、暖かい家に移り住んで18℃を超える寝室で生活する人に比べて、5年後には2.02倍も入眠困難(眠るのに60分以上かかる)を発症するリスクが増加する。

    生活”環境”病と言う新たな枠組み

    健康診断を受診すると、現状は生活習慣に起因する病気を予防するために体重や、おなか周りの大きさが規定を外れていなかをチェックされます。これは生活習慣病と呼ばれる病気の予防のためと言われています。

    これに対して、冬でも寒くない住環境を整えることが、「生活環境病」の予防になるとして、日本の研究者らによって国際的に提案されました。

    <参考>Role of housing in blood pressure control: a review of evidence from the Smart Wellness Housing survey in Japan

    これによると、

    断熱性能の不足
    不適切な暖房使用

    が、生活環境病の原因になるとして、これを適切に改善すべきだと謳っています。
    そして、生活環境を良くすることで高血圧や循環器疾患を予防できるとしています。
    つまり、長期に渡って冬に暖かく過ごすことが、生活環境病の予防に重要という事になります。