断熱等級6とG2の違いについて
これから家づくりを始められる方にとって、色々な専門用語が沢山出てきてかなり混乱されている方も多くいます。「断熱性能」という建物の性能を表す指標1つとっても、非常に沢山の言葉が出てきて混乱するでしょう。そこで、今回はこの辺の言葉の整理を行っていきたいと思います。
断熱性能とは?
多種多様な家の性能
家には間取りやデザインの他に、建物の性能を規定するルールがあります。例えば、地震や台風に対する性能は耐震性能であり、建物の寿命に関する性能は耐久性能と言います。色々性能がある中の一つが断熱性能となります。この中で、重要な5大性能をまずは知っておきましょう。
<家の5大性能>
・耐震性能:地震や台風によって建物が壊れない、または生命を守れるかの性能。
・防水性能:台風や日常の降雨から雨漏りや漏水を起こさないための性能。
・断熱性能:主に建物の保温性能のことを指し、冷房や暖房を如何に効率的に効かすかの性能。
・耐久性能:家の物理的な老朽化による寿命を如何に延ばすかの性能。設備などの家の構造外については別。
・耐火性能:家の中で起きた火事や、家の外で起きた火事から如何に建物を守り、居住者を逃げさせるかの性能。
と、言った具合です。
それぞれ、本当はもっと詳しく説明するべきですが、ここでは性能は色々あると分かっておけばOKです。
断熱性能の重要性
近頃は、特に断熱性能が重要視されています。それは何故でしょうか?
これには大きな理由があり、5大性能の中で断熱性能だけが今まで法律での規定が無かったのです。
古くから火事への対策や地震や台風、雨への対策は講じられてきました。
ですので、法律も割と充実しています。
これに対して、暑さ・寒さへの対策は今までかなり蔑ろ(ないがしろ)にされてきました。
しかし、近年はヒートショックなどで死亡する家庭内事故が目立つようになってきて、断熱性能への対策が必須であることが認識されだしてきたのです。
<参考>ヒートショックは交通事故よりも怖い!健康安全に暮らせる住宅とは?
今の時代は正に断熱性能創成期といった感じで、ともすれば無視されがち。それゆえ重要な性能となっているのです。
断熱性能・気密性能・遮熱性能の違い
では、結局断熱性能とは何なのでしょうか?これには似たような言葉の、気密性能や遮熱性能も関わってきます。これらを一気に整理したいと思います。
・断熱性能:建物の保温性能。如何に外部の気温に左右されず、冷暖房が効率よく効くかの性能。UA値で表す。
・気密性能:建物の隙間の少なさを表す性能。気密はあくまで隙間の多さのみを表す。C値で表す。
<参考>気密性能を表すC値はどの程度確保すべきか?専門家による解説
・遮熱性能:太陽からの(反射を含めた)日射(電磁波)を如何に防ぐかの性能。η値(イータち)で表す。
特に、ごっちゃにされやすいのが断熱性能と遮熱性能です。建物は、大きく2種類の要素から家の中の温度に影響を受けています。一つが家の外の温度(気温)。もう一つが太陽からの(反射を含めた)日射。
どうも、温度と日射の違いが分かりづらいようですが、この2つは明確に違います。例えば、同じ気温でも太陽の日差しがある場合と曇っている(太陽の日差しがない)場合とでは、暖かさが大分違う経験があるのではないでしょうか?
結局、気温も長い時間でみれば太陽の日射による影響で決まるのですが、一般的には気温と太陽の日射による影響は分けて考えます。
ですので、断熱性能とは「建物の保温性能」のことを指すと知っておいて下さい。
家の断熱性能を表す色々な表現
家の断熱性能を表す表現には色々な表現の仕方が存在します。これが、慣れていない一般の方には分かりづらいと考えられます。今回は大きく3つの表現があることを知っておいて下さい。それは、
・UA値
・Heat20グレード
・断熱性能等級
の3つです。それぞれみていきましょう。
UA値とは?
UA値は、建物の断熱性能を計算によって求めた数値で表す指標です。具体的には、
【建物と屋外との温度差が1℃の時に、1秒間に逃げて行く熱の量。】
を表しています。この指標が分かりやすいのは、建物それぞれにこのUA値が異なっていて、どんな建物でも計算可能な点です。
ですので、UA値は色々な場面で使われます。
ただ、一般の方にUA値と言っても、どんな数値が良くて、どんな数値が悪いのかを理解してもらうには何かの基準が必要です。例えば、UA値0.6と、言われてもこれが良いのか、悪いのかを判断するには何かの基準があった方が便利です。
そこで、考え出されたのが、Heat20グレードや断熱性能等級となります。
Heat20グレードとは?
これは、いわゆるG2やG3と言った規程です。Heat20と言う団体が策定したUA値の基準で、これが一つの断熱性能の目安となっています。
例えば、大阪や東京などの比較的温暖な地域(日本で最も多くの人が住む地域の気候)では、以下のような規定があります。数値は小さい方が断熱性能が高くなります。
断熱水準 | 基準UA値 |
---|---|
G1 | 0.56 |
G2 | 0.46 |
G3 | 0.26 |
その他の地域については以下を参考にして下さい。
つまり、それぞれの数値をクリアーしているかどうかで建物の断熱性能のグレードが決まるのです。
このグレードに何の意味があるのか?については、以下を参考にして頂けたらと思いますが、最もバランスのとれたグレードはG2となります。
断熱性能等級とは?
色々ややこしくしている原因の一つが、このグレードについて名前が別である点です。
先ほどのHeat20によるグレードは、実は民間の団体が勝手に決めた水準なのです。
民間の団体といっても、構成員は大学の教授などの権威と呼ばれる人々で構成されているため、非常に説得力のある団体ではあります。ですので、世間に広く認知され、G2と言った言葉がよく利用されるようになりました。
しかし、Heat20のグレードはあくまで民間団体の勝手な基準です。これを例えば、国が利用する場合は何かと問題が想定されやすいです。そこで、しっかりと法律に根付いた基準にしたのが、「断熱性能等級」と言う訳です。
この断熱性能等級が面白いのは、実は以前から存在した基準だったのですが、最高等級の断熱性能が低く、基準として機能していませんでした。そこで、上位等級と言う位置づけで新たな基準を最近設けたのですが、これがしっかりHeat20の基準をそのまま転用しているのです。それだけHeat20と言う団体が信用されている証といっても良いのですが。
断熱性能等級は大阪や東京では以下のようになります。等級6と7がしっかりHeat20のG2、G3を踏襲しています。また、等級4以下は2030年には廃止される予定となっており、2030年以降は等級5以上でなければ、住宅は建てられなくなる予定です。
断熱性能等級 | 基準UA値 | 基準ηAC |
---|---|---|
7 | 0.26 | 2.8 |
6 | 0.46 | 2.8 |
5 | 0.60 | 2.8 |
4 | 0.87 | 2.8 |
3 | 1.54 | 3.8 |
2 | 1.67 | – |
1 | – | – |
他の地域については以下を参考にして下さい。
また、上の表を見て気づいた方もいると思いますが、この断熱性能等級には本来遮熱の指標である、基準ηACと言うものも設けられています。この点がHeat20グレードとは異なる点で、しっかり遮熱の対策も行うべきと言うメッセージが込められています。
断熱性能等級6とG2の違いはここにある訳です。