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これからの家づくりは「暑さ」だけでなく「湿気」と「日射」も考えよう

太田(健康・高断熱住宅専門家) 太田(健康・高断熱住宅専門家)

Contents

    家を建てるとき、「冬暖かい家にしたい」「断熱性能を高くしたい」と考える方は多いでしょう。
    もちろん断熱は大切です。しかし、これから住宅を建てるのであれば、もう一つ考えておきたいことがあります。

    それが、20~30年後の夏をどう快適に過ごすかという視点です。
    過去の記事では、将来的に気温が上がっていくと言う予測があることを紹介しました。
    2060年を踏まえた断熱計画を考える
    2024年の9月は2060年並みの暑さだった!!

    住宅は一度建てれば数十年間使い続けます。今は快適でも、30年後の気候に合わなくなってしまっては困ります。将来の気象予測を見ると、気温だけでなく、湿気や日射についても現在とは違った状況になる可能性があります。

    暑くなるだけではなく、「蒸し暑い夏」が長くなる

    夏の不快感を考えるとき、気温だけを見るのは十分ではありません。
    同じ28℃でも、湿度が低ければ比較的過ごしやすく、湿度が高ければ蒸し暑く感じます。

    人間は汗を蒸発させることで体温を下げています。そのため、空気中の水蒸気が多くなり汗が蒸発しにくくなると、体から熱を逃がしにくくなります。

    そこで注目したいのが、空気中に実際にどれだけ水蒸気が含まれているかを示す「絶対湿度」です。
    将来気象データを使って大阪を比較すると、どの気候シナリオでも現在の標準的な年より絶対湿度が高くなり、とくに6~8月頃の差が大きくなっています。

    【将来の絶対湿度―標準年とSSPシナリオの比較】

    つまり将来の夏は、単純に気温が高くなるだけではなく、より蒸し暑くなる可能性があるということです。

    実は2024年に、すでに「未来の湿度」を経験している

    さらに興味深いのが2024年のデータです。

    大阪の絶対湿度を比較すると、7~8月は2060年の厳しい気候シナリオとほぼ同程度で、9~10月にはそれを上回る結果となっています。

    【標準年・2060年SSP5-8.5・2024年の絶対湿度比較】

    つまり、「30年後にはこんな夏になるかもしれない」と予測されている環境を、私たちはすでに経験し始めているとも考えられます。

    この変化は、住宅のエアコン計画にも影響します。
    一般的な100㎡(30坪)程度の住宅を想定して計算すると、将来は湿気を取り除くために必要となる負荷、いわゆる「潜熱負荷」が現在より増え、とくに6~7月頃には200W程度増加するケースもあります。

    【将来増加すると予測される潜熱負荷】

    温度だけを下げればよかった時代から、温度と湿度を同時にコントロールする住宅へ考え方を変えていく必要がありそうです。
    高断熱住宅では室温がすぐ設定温度に達し、エアコンが停止することがあります。その間も24時間換気によって外から湿気は入ってくるため、「室温は低いのに湿度が高くて不快」という状態も起こり得ます。

    これからは冷房能力だけでなく、再熱除湿や専用除湿なども含め、どう除湿するかを考えることが重要になるでしょう。

    さらに増える可能性がある「窓からの日射」

    もう一つ注意したいのが太陽の日射です。

    2060年の予測と現在の標準的な気象条件を比較すると、4~9月頃にかけて日射量が増える予測となっています。

    【標準年と2060年SSP1-2.6の日射量比較】

    これは住宅にとって非常に重要です。
    高性能な住宅であっても、大きな窓から直射日光が入れば、室内には熱が持ち込まれます。
    特に朝日を受ける東面と、西日の当たる西面については、これまで以上に日射遮蔽を意識した窓計画が必要になります。

    「夏」が長くなると、従来の庇だけでは難しい

    さらに将来は、暑さそのものの期間も長くなると予測されています。

    現在の標準年では、28℃を超える時期はおおむね初夏から初秋ですが、2060年の予測では5月頃から10月頃まで高温になる時間帯が広がります。

    【標準年と2060年の気温比較】

    ここで住宅設計上の難しい問題が出てきます。
    昔から日本の住宅では、夏の高い太陽は庇で遮り、冬の低い太陽は室内へ取り込むという方法が使われてきました。
    ところが暑い時期が10月頃まで続くと、太陽高度がかなり低くなった時期まで日射を防がなければなりません。
    大阪では、夏至頃の南中高度が約75.5°なのに対し、10月下旬には約43.9°まで下がります。

    ところが、同じくらいの太陽高度となる2月頃には、反対に寒さ対策のために日射を室内へ取り込みたいのです。

    そのため、南面の大きな掃き出し窓を固定された庇だけで一年中うまく調整するのは、これまで以上に難しくなります。
    そこで有効になるのが、必要な季節だけ使えるアウターシェードなどの外付け日除けです。

    【アウターシェード参考写真】

    夏から秋までは日射を遮り、冬になれば収納して太陽熱を室内へ取り込むことができます。
    Low-Eガラスなどで一年中日射を減らす方法もありますが、冬の日射取得まで減らしてしまいます。

    これからの住宅では、すべてを固定してしまうよりも、季節に合わせて日射を調節できる仕組みを持たせることが合理的になっていくでしょう。

    これから家を建てるなら「30年後の夏」を想像してみる

    将来の住宅を考えるとき、大切なのは単純に「断熱性能を高くする」ことだけではありません。

    これからは、

    冷房の空気を保つこと
    湿気を取り除くこと
    窓から入る日射を抑えること

    この3つをセットで考える必要があります。

    2024年のような夏を見ると、これは遠い未来だけの問題とは言えなくなってきました。
    これから建てる住宅に30年以上住むのであれば、その家は2060年頃にも使われています。

    だからこそ、現在の気候だけを基準にするのではなく、これから変化していく夏にも対応できる家を今のうちから考えておくことが、長く快適に暮らすための大切なポイントになりそうです。