リビング階段は高断熱住宅が必須
近年の建物の傾向として、リビング階段を望む計画が増えています。
10棟の家があったとすると、そのうちの8棟はリビング階段にっていると言うデータもあります。
このリビング階段ですが、数年前までは冬場にコールドドラフトをまねく恐ろしいものとして、東京大学の前教授が書籍にしていたのですが、今ではその続編の書籍でそれを防ぐ方法として高断熱住宅を紹介されているほどです。
リビング階段とは?
そもそも、リビング階段とは何でしょうか?
リビング階段は、間取りの一種です。その名の通り、リビングに階段を設けたプランのことを指します。
リビング階段はここ十数年、とても人気のプランです。
何故、人気なのかと言うとそれは「子供と親のコミュニケーション」がとれる手段の一つと言われているからです。
例えば、こちらは典型的なリビング階段です。
玄関から入ってきて、2階の個室に行くまでに必ずLDKを通ることになります。
このため、例えば子供が家に帰ってきて自分の部屋にたどり着くまでに、LDKに居る人と何らかのコミュニケーションをとることになります。
もし、これが廊下側に階段の登り口があると、LDKに居る人に気付かれることなく自分の個室にこもり切ることが可能となってしまうのです。
また、逆に家から出ていく際もLDKに通ることが無いため、誰にも知られることなく外出も可能となります。
こうしたことを防ぐために、リビング階段を望む声が今では増えているのです。
古い間取りの建物だとかなりの確率で階段が廊下に設置されていましたが、その時期の人々もリビング階段の存在を知っていたらリビング階段にしていたと言う人が殆どだったことでしょう。
リビング階段で後悔する寒さ対策
しかし、ひと昔前までは設計する側の人間がこのリビング階段を否定的に捉えていました。
それは何故かと言うと、リビング階段にするとクレームに繋がるからです。
リビング階段が最悪なのはコールドドラフトが原因
リビング階段で最も多いクレームは「冬に寒い!」と言うクレームです。
設計者はこのことを知っているため、敢えて自分からリビング階段を提案したりはしなかったのです。
何故、リビング階段だと冬場に寒くなるのでしょうか?
この大きな理由は、「コールドドラフト」と言う現象のためです。
カタカナで表記すると非常に難しい現象のように思えますが、実はこれはとてもシンプルな現象です。
- 1階のLDKで暖房をしている
- 暖房の無い2階ではLDKに比べて空気が冷たい
- 冷たい空気は暖かい空気より重たいので、階段を通って冷たい空気が流れ落ちてくる
この現象こそが、コールドドラフトなのです。
これが原因でリビング階段にしたことをやめておけば良かったと後悔する人が非常に多かったのです。
コールドドラフトを防ぐ対処療法?
ではこのコールドドラフトを防ぎつつ、リビング階段を実現するためにはどうすれば良いでしょうか?
対処療法(一時しのぎ)的にとられた対策として、よくあったのが、
【階段に扉を設置する】
方法です。
階段のぼり口か降り口のどちらかに扉を設置することで、流れを防ごうとしたのです。
確かにこのようにすれば、扉が無い時に比べてコールドドラフトの流れ自体は防ぐことが可能です。
しかし、実際には扉を開けるとコールドドラフトが発生しますし、何より階段に扉があると邪魔になります。
こうした理由から、対処療法的なこの対応ではそれほどリビング階段が普及することはありませんでした。
コールドドラフトを防ぐ根本的な対策とは?
既にお気づきの人も多いと思いますが、コールドドラフトを根本的に防ぐためにはどうしたら良いでしょうか?
これは理屈上はとても簡単なことなのですが、分かっていても以前は難しかった方法です。
根本的に対策するには、
【1階と2階の温度差を小さくすれば良い】
のです。
頭で分かっていても、これを実現することは難しかったのです。
誰もいない2階を別に暖房することも、光熱費が倍掛かることを思うとそこまでしようと思う人はいないでしょう。
では、どうしたら良いのか?
根本的な解決としては、
【家の断熱性能を高める】
これに尽きるのです。
こちらの写真では、リビング階段の上にリビング上部が吹抜けで、更に階段自体もスケルトン階段(蹴込が無い階段)となっています。更にこの家は2階の廊下にすら間仕切りが無く、手摺状になっています。
この家、暖房はLDKにあるエアコンのみで行っています。
寒く無いのでしょうか?
2022年の1月に計測した2階廊下の温度を見てみましょう。
見て歴然と分かるのは、LDKと2階廊下の温度差が殆ど無く、外気温に比べて遥かに暖かいことが分かります。
こうなると、人が肌で感じるようなコールドドラフトは発生しません。
また、1階から2階へ移動したとしても温度差を感じること自体がほぼ無くなります。
これが1台のエアコンによる暖房で実現できているのです。
まとめ
リビング階段を実現して、家族間のコミュニケーションが取りやすい間取りとした上で、コールドドラフトの無い快適な住まいとするためには高断熱住宅にする必要がある。